犬の股関節形成不全について
2023.03.02
犬の股関節形成不全は大型犬に多くみられる関節の病気です。
子犬の時期から症状が出るものと、成犬になってから症状が出るものがあり、重症なケースでは歩行困難となり、手術が必要になることもあります。
犬の股関節形成不全のサインを見逃さずに、早期発見、早期治療を目指しましょう。
症状
股関節とは、太ももの付け根にある関節で、骨盤と大腿骨をつないでいる部分を指します。
股関節形成不全は関節部分の骨が変形し、股関節がかみ合わなくなることで発生し、関節内に炎症を起こします。発症すると、以下のような症状がみられます。
・お尻をぶらぶら揺らしながら歩く
・足を引きずる
・運動を嫌がる
・後ろ足を同時に蹴って走る(ウサギ跳び)
・段差を避ける
・散歩の途中で座り込む
また、後ろ足の片側だけに症状が出るケースと、両方の後ろ足に同時に症状が出るケースがあります。症状が進行すると、歩行困難になることもあります。
原因
この病気は遺伝によって発生することが多く、親犬が股関節形成不全であれば、その子どもも股関節形成不全になりやすいと言えます。
大型犬や超大型犬に多くみられることで知られており、この病気にかかりやすい代表的な犬種は以下の通りです。
- ラブラドール・レトリバー
- ゴールデン・レトリバー
- ジャーマン・シェパード
- バーニーズ・マウンテンドッグ
- ニューファンドランド
また、遺伝要因に加え、運動不足や偏った食事などが原因の肥満もリスク因子になります。
前述の通り大型犬や超大型犬で発生するケースが多いものの、中型犬や小型犬、猫での発生も報告されています。
診断
股関節形成不全の診断は、一般的に以下のような手順で行われます。
・症状の確認
・身体検査で筋肉量と関節の動き、痛みの確認
・単純レントゲン撮影で股関節の形状の確認
・全身麻酔下での特殊なレントゲン撮影(Penn HIP)
・全身麻酔下での関節鏡検査
・全身麻酔下でのCT撮影
全身麻酔下で行う検査は、必要性があると獣医師が判断したケースで行われます。
治療
股関節形成不全の治療方法は年齢や犬種、重症度によって変化します。
股関節の軽度な変化で症状が軽いものであれば内科療法が選択され、股関節の変形が重度で症状が重ければ外科療法が選択されるケースが多くみられます。内科療法と外科療法、それぞれの一般的な治療方法は以下の通りです。
<内科療法>
・痛み止めや抗炎症剤などの飲み薬の処方
・リハビリやマッサージ
・体重の適正化
<外科療法>
・人工関節との入れ替え(股関節全置換術)
・骨盤の向きの修正(三点骨切り術)
・痛みが出ている骨の切除(大腿骨頭切除術)
予防
股関節形成不全は遺伝性疾患のため、完全に予防することは困難です。
しかし、前述の通り肥満も大きな原因になるため、栄養バランスの取れた食事と適度な運動で、体重管理を行うことが予防につながります。また、成長期(1歳~2歳)での発症が多いため、前述のような股関節形成不全になりやすい犬種は、症状がなくても成長期の間は定期的にレントゲン検査を受けることをお勧めします。
まとめ
犬の股関節形成不全は大型犬に多く、後ろ足に問題が出るなど、様々な症状を示します。
子犬の時期に発症することも多く、症状が進行し重度になると歩行困難になることもあるため、後ろ足の不自由な様子がみられたら診察を受けましょう。