予防診療の重要性-ワクチン(狂犬病・混合ワクチン)編
2023.02.04
予防診療とは予防できる病気に着目し、病気の発症を抑えたり、万が一発症しても病気の重症化を抑えるために行われる診療のことであり、狂犬病ワクチン接種、混合ワクチン接種、ノミダニ予防、フィラリア予防などが代表的な予防診療として知られています。
今回は予防診療のうち、狂犬病ワクチン接種と混合ワクチン接種をピックアップして解説します。
■狂犬病ワクチンと混合ワクチンを接種するのはなぜ?
〇狂犬病ワクチン
狂犬病は犬だけでなく人にも感染する人獣共通感染症で、発症するとほぼ100%が死亡するという恐ろしい病気です。
非常に致死率が高い病気であることから、流行を防ぐため狂犬病予防法という法律で接種義務が定められています。具体的には、生後91日以上の犬には毎年1回の接種が義務付けられており、違反した場合は20万円以下の罰金を科されることがあります。
〇混合ワクチン
複数のワクチン成分を1回の注射でまかなえるものを混合ワクチンと呼びます。
混合ワクチンを接種することで、幼少期にかかってしまうと命に関わる疾患である様々な疾患を予防することができます。また、感染症の流行を防ぐという観点から、子犬や子猫だけでなく成犬や成猫にも接種が推奨されています。
また、混合ワクチンの成分は「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」に分かれています。
コアワクチンとは世界中で感染が見られる、重度の致死的な感染症に対するワクチンのことで、ノンコアワクチンは住む地域や状況に応じて接種を選択できるワクチンのことを指します。コアワクチンとノンコアワクチンで予防できる感染症はそれぞれ以下の通りです。
◆コアワクチンに含まれる感染症
犬
1.ジステンパーウイルス感染症
2.パルボウイルス感染症
3.アデノウイルス感染症
猫
1.猫ウイルス性鼻気管炎
2.猫カリシウイルス感染症
3.猫汎白血球減少症
◆ノンコアワクチンに含まれる感染症
犬
1.パラインフルエンザウイルス感染症
2.コロナウイルス感染症(※新型コロナウイルス感染症ではない)
3.レプトスピラ菌感染症
猫
1.猫白血病ウイルス感染症
混合ワクチンはコアワクチンのみのもの、ノンコアワクチンのみのもの、もしくはコアワクチンとノンコアワクチンを組み合わせたものなど様々なワクチンが販売されています。年齢や飼育環境により最適なワクチンは異なりますので、どのワクチンを接種するかは、獣医師にご相談ください。
■ワクチン接種の時期はいつ頃?
〇狂犬病ワクチン
狂犬病ワクチンは法律によって以下のように接種する時期が決められているので、忘れずに接種するようにしましょう。
・生後91日以上
・飼育を開始してから30日以内
・次の年度からは4-6月に年に1回
〇混合ワクチン
混合ワクチンの接種で最も重要な時期は、免疫力の弱い子犬や子猫の時期です。
生まれたばかりの子犬や子猫には母親から与えられている母子免疫があり、その免疫により危険な病気への抗体が作られますが、この抗体は離乳後に少しずつ減少すると言われています。
従って、混合ワクチン接種により、離乳後の子犬の感染症に対する免疫力を高めることが重要です。
また、子犬や子猫に対するワクチン接種は以下のようなスケジュールで接種されることが一般的です。
生後2ヵ月:1回目ワクチン接種
生後3ヵ月:2回目ワクチン接種
生後4ヵ月:3回目ワクチン接種
その後は毎年1回の追加接種をしていきます。
※飼育環境によっては1回目のワクチン接種が生後1ヵ月から始まって合計4回接種になることがあります。
※あるいは生後3ヵ月から開始されて合計2回接種になることもあります。
■最後に
ここまで解説した通り、ワクチン接種を行うことで、感染症の発症や重症化を抑えることができます。
また、混合ワクチンは狂犬病ワクチンとは異なり任意での接種のため、接種しないことでの罰則があるわけではないものの、接種しなかったことにより感染症が重篤化するリスクを考えると、積極的に接種することをお勧めします。ワクチン接種についてご不明な点があれば、当院までご相談ください。