予防診療の重要性-ノミ・マダニ・フィラリア予防編
2023.02.28
予防診療とは、病気の重症化を抑えたり、病気が重症化する前に予防を行うための診療です。
ペットの健康を維持するために重要であり、狂犬病ワクチン接種、混合ワクチン接種、ノミダニ予防、フィラリア予防などが代表的な予防診療として知られています。
今回は予防診療のうち、ノミ、マダニ、フィラリア予防をピックアップして解説します。
■ノミ、マダニ、フィラリア予防を行うのはなぜ?
ノミ、マダニ、フィラリアといった寄生虫は、犬や猫に寄生することで、さまざまな健康上の問題を引き起こします。
ノミやマダニの場合は寄生されると皮膚の痒みや炎症を引き起こし、愛犬や愛猫のQOL(生活の質)を下げてしまいます。
加えてノミ、マダニ、フィラリアは様々な感染症を媒介することでも知られています。
以前は予防薬が普及しておらず、これらの寄生虫がもたらす病気を十分防ぎきれないことで、症状が重症化してしまい、亡くなってしまうケースも多く見られました。
しかし、現在では予防医学の進歩により、予防薬を投与することで上記の寄生虫がもたらす感染症を未然に防いだり、重症化を抑えることができるようになりました。
また、これらの寄生虫が媒介する感染症の中には人獣共通感染症と呼ばれる、人間に感染する危険性もある感染症も含まれます。
従って、愛犬や愛猫の健康を守り続けるのはもちろん、人間にも感染する感染症の流行を防ぐためにも、寄生虫の予防は非常に重要であると言えます。
■ノミ、マダニ、フィラリアによってもたらされる病気
前述した通り、犬や猫はノミ、マダニ、フィラリアに寄生されることで、皮膚の痒みや炎症が起こったり、感染症に感染することがあります。
ノミ、マダニ、フィラリアによってもたらされる代表的な病気は以下の通りです。
〇ノミによってもたらされる病気
瓜実条虫症(うりざねじょうちゅうしょう)
この病気は、犬や猫が毛づくろいの際に瓜実条虫という寄生虫を持ったノミを飲み込むことで感染します。
瓜実条虫は一般的にサナダムシという名前で知られ、大量に寄生されることで腸炎を起こすことがあります。
ノミアレルギー性皮膚炎
この病気は犬や猫がノミの唾液に対してアレルギー反応を起こしたときに発生する皮膚病で、皮膚の激しいかゆみ、発赤、炎症、および患部を引っ掻いたり噛んだりすることによる脱毛、かさぶた、ただれなどが症状として見られます。
犬や猫が患部を引っ搔くことで、さらなる炎症が起きたり、傷口が広がったりすることもあります。
一度発症するとわずかなノミの寄生で重篤な症状が引き起こされることも多く、完治には時間を要します。
〇マダニによってもたらされる病気
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
この病気は、犬や猫がこの感染症のウイルスを保有したマダニに咬まれることで感染し、発症すると発熱や腹痛、嘔吐などが見られます。
非常に致死率が高く、人間に感染して死亡する例も確認されています。
〇フィラリアによってもたらされる病気
フィラリア症
この病気は蚊を通じて媒介される感染症で、フィラリアを保有した蚊に吸血され、そのフィラリアが動物に寄生することで発症します。
一般的な症状には、四肢のむくみ、呼吸困難などが挙げられます。
治療法としては、外科手術で心臓内のフィラリア成虫を摘出する方法や、成虫駆除薬の投与、予防薬の長期投与などがありますが、どれもリスクを伴い、フィラリア症になる前の健康な状態に戻すのは難しいと考えられています。
また、犬に対する感染予防はよく知られていますが、猫にも感染することがあります。
猫の場合は犬とは違い検査や診断が難しく、突然死を引き起こすケースもあります。
■ノミ、マダニ、フィラリアの予防方法について
〇ノミ・マダニ
ノミやマダニが吸血し始める春頃から予防薬を使用することが大切です。
一般的なノミ・マダニ予防薬は月に一度の投与を行うことが多いため、毎月忘れずに行いましょう。
ホームセンターやペットショップなど、獣医師のいない店舗で販売されているノミ・マダニ予防薬は、薬用量の低いものが多いため注意が必要です。
そのため、ノミ・マダニ予防は効果の高い動物病院専用のものがお勧めです。
〇フィラリア
フィラリアは蚊に吸血されることによって感染するため、蚊が吸血する時期である春から秋まではしっかりと決められた用法と用量でフィラリア予防薬を投与しましょう。
予防期間の目安としては蚊が出はじめてから1ヶ月後から、蚊が見られなくなってから1ヶ月後までが一般的です。
最近は色々なタイプの予防薬があるため、担当医と相談して愛犬や愛猫に合うものを選ぶとよいでしょう。