日常の動作に注意!犬の椎間板ヘルニアについて
2022.12.19
自宅で飼っている犬がどこか痛そうにして震えている、急に歩けなくなってしまったなどの怖い経験をしたことはないでしょうか。
これらの症状は「椎間板ヘルニア」という病気の可能性があります。椎間板は背骨の中でクッションの役割をしていますが、強い衝撃などではみ出し脊髄を圧迫し「痛み」を発します。
そのレベルが重度になると、神経が麻痺してしまい前足や後ろ足が動かなくなってしまう怖い病気です。今回は犬の椎間板ヘルニアについてお話し致します。
椎間板ヘルニアとは
背骨は「椎骨」という骨が集まってできたものであり、この椎骨と椎骨の間にあるのが椎間板です。椎骨は首から背中、腰にかけて連なっており、これによって身をかがめたりそらしたりといった動きができるようになっています。
この椎骨の中には「脊髄」という太い神経がとおっており、脳からの情報を伝達し手足を動かしています。犬の場合、元々四つん這いのため首と腰への荷重がかかりやすく、特にミニチュアダックスなどの胴体が長い犬種はより負担がかかりやすいと言えます。
急な動きやジャンプ、後ろ足で立ち上がるなど首や腰に負荷がかかる動作をした際に、椎骨と椎骨が圧迫されその間の椎間板(椎間板物質、髄核ともいいます)が内側へはみ出し、椎骨の中を通る脊髄を圧迫することでさまざまな症状が出ます。
症状
頻度として多いのは腰の椎間板ヘルニア(腰の椎間板が脊髄を圧迫)です。
軽度であれば腰の「痛み」だけで、じっとして動きたがらない、震えている、抱っこした際などにキャンと鳴いてどこか痛そう、などの様子が見られます。
脊髄の圧迫のレベルが重度になると、左右両側もしくは片側の後ろ足が動かない(完全麻痺)、または動きにくく(不全麻痺)なってしまいます。完全麻痺の状態では後ろ足が動かなくなり、引きずってしまいます。
首の椎間板ヘルニア(首の椎間板が脊髄を圧迫)では、軽度であれば腰の椎間板ヘルニア同様の痛みだけで、首を触ると痛がる、ご飯を食べる時などに下を向けない・向くのを嫌がる、などの様子が見られます。
圧迫が重度になると左右もしくは片側の前足と後ろ足の完全麻痺または不全麻痺が起こります。腰の椎間板ヘルニアと異なり前足にも症状が出てくるため注意が必要です。
治療法
椎間板ヘルニアは症状が「痛み」だけであれば、首でも腰でも安静にしていれば改善する場合が多いです。
人間でいう「腰痛」と同じ状態ですから、寝てじっとして安静にしていれば良くなるのですが、動物はそう上手くできません。安静にしてねと言っても自由に動いてしまうため、ケージなどに閉じ込めて動きを制限しなければなりません。
お散歩させたりや遊ばせたりすることも厳禁です(食事や排泄の際は出してあげてもいいでしょう)。痛みがひどいようであれば、動物病院で鎮痛剤などの処置を実施します。
圧迫が重度で、麻痺や不全麻痺がある場合は手術が必要になります。その際は、どこの椎骨と椎骨の間の椎間板が飛び出しているか判断しなければならないため、CTによる脊髄造影検査やMRI検査が必要になります。
日常の注意点
普段から階段の上り下りは避け、ベッドやソファに飛び乗ることを極力やめさせましょう。スロープや段差の低い階段をつけてあげるのも良いでしょう。後ろ足だけで立ち上がる姿勢(おねだりをする時など)は最も腰に負担がかかるため、こちらもやめさせることをおすすめします。
まとめ
椎間板ヘルニアは我々人間と同じような症状がでる病気です。放っておけば進行して歩けなくなってしまう場合や、背骨・脊髄の腫瘍、脊髄梗塞など他の病気に罹っている場合もあるため、様子がおかしいと思ったらすぐに動物病院に相談しましょう。
ご不安なことやご相談がある際はお気軽に当院にご連絡ください。
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